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 デシャップ台の向こうで、店長がこちらをちらちら見ながら、天ぷらやネギを乗せながら、複数のうどんを同時に仕上げていた。 「山下さあ、いいかげんにしろよな! もう入って半年になるらしいよな。もうちっとてきぱきと、やってくんね?」 「はぃ……すみません……」  洗い場にいる女子高生アルバイトの小嶋益美が「はぃ……すみません……」と僕の口真似をして、まるで悪びれた様子もなくキャッキャと笑った。 (ちっくしょー……)  が、何もいえない。   確かに僕はいつも卑屈そうに、すみませんと口にしたきり黙りこむ。良くないことだが、すっかり癖になってしまっている。  彼女は、下げ棚にたまった丼物の椀を流し台に浸けこみ、ラックにはうどん鉢や薬味皿を並べて自動食器洗浄機に押し込んだ。  僕は並べた盆の上に、それぞれトッピングやセットでつける薬味、調味料を配置する。店長の注意を引いてしまい余計に慌てている分、かえって手つきがあやしくなっている。
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