パスターカは今度こそ本当にオナカがスイタ

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パスターカは今度こそ本当にオナカがスイタ

 次に目を覚ますと、見慣れた天井が見えた。 「パスターカ! パスターカ! 分かるか?」  チルの大声にパスターカは顔をしかめる。  どうやら、施術院室に戻れたようだ。  チルの声を聞きつけたキトがパスターカのベッド脇に飛び込んできた。 「パスターカ!」  パスターカの顔をマジマジと覗き込む。 「具合はどうだい?」 「……………………った」 「ん? なんて?」 「腹、減った」  パスターカの言葉を聞いて、キトは肩を落とし、チルは吹き出した。 「体調は大丈夫なようだな。どれ、ナザへの報告と調理室にスープでも届けて貰えるように言ってくるかの。キト、大事ないとは思うが、パスターカの様子を見ていておくれ」 「はい」  と素直に返事をしたキトは、チルが施術院室を出て行った途端、パスターカの頬をつねった。 「いてて。何だよキト。怪我人に何するんだ」 「君は友達甲斐がないよね、パスターカ! 君一人氷騎士に向かって、挙げ句、勝手に死んじゃうんだから」 「……死んでないけど。俺」 「どれだけ心配したと思ってる! ナザだって自分が留守を守れと命じたせいだと、誰より責任を感じていたし、チルはありったけの治癒力を注ぎ込んでいたし、カシリアだってあまり寝ずに薬の調合を続けていたし、ジーマは治癒芳香のある植物を毎日パセラ山中腹の崖まで取りに行っていた。僕だって。僕だって。どれだけキミを心配したか、分かってないよ、パスターカ」  ポロッとこぼれた涙を白衣の袖でグイッ乱暴に拭くキトの言葉に、パスターカは胸が熱くなった。  ベッドから起き上がり、後ろを向いたキトの側まで行くと、肩を抱いた。 「ありがとう、キト。心配かけてごめんな。お前がいたから、俺はここに戻って来れたんだと思う」  パスターカの言葉に、キトが静かに涙を零す。 「キトのお陰だけじゃないだろ、バカモノめ」  ぶっきらぼうな声にパスターカが振り向くと、憮然としながら立っているナザと、含み笑いをしながらスープを持っているサリが、施術院室に入ってくるところだった。  キトはさっと涙を拭いて二人に頭を下げる。 「いいよ、キトくん。そのままで。パスターカくんを一番心配していたのは、親友であるキトくんだったものね。自分の命を半分パスターカくんにあげる術はできないかとチルに相談していたくらいだったし」  サリに言われたキトは、恥ずかしそうに横を向く。 「さぁ、まずは食事。何せパスターカ君は、7日も寝ていたのだから。ガーデンバードのクリームスープとフカフカパンだよ。ゆっくり良く噛んでお食べ。」  トレーに乗せられた食事は簡単ではあったが、温かくとてもいい香りがしていて、パスターカは夢中で食べた。 「それだけ食えりゃ、大丈夫だな」  横で座って、パスターカの食事を眺めていたナザが皮肉げに呟く。 「良かったとお言いなさい。弟子を死なせたと悩んでいたのですから」 「……死んでないけど。俺」  なぜ誰も彼も、自分を殺すのだろうか。  二度目の力なき反論も、誰も聞いていない。  そこへ、カゴに薬草を山ほど乗せて、カシリアが入ってきた。  パスターカを見て、ホッとしたように笑顔を見せる。 「パスターカ、お帰り。信じていたよ、君が戻って来るって」  パスターカはカシリアの顔をジッと見た。  ハッとして、それから言っていいのかどうか迷い、おずおずと口にした。 「カミリアン王子……。カシリア、君はカミリアン王子だよね?」
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