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コイツが建国の祖?パスターカは驚く
ナザの呪文で長い階段や通路を上がることもなく、一同はあっという間に王城にたどり着いた。
「こんなに簡単に王城に入れるんだな」
自分が訪れたときの事を思い出し、パスターカがポツリと呟いた。
意識化で訪れたというのに、体を使って階段を上り、歩き回った。
この差は何なのだろう。
「サリの両親が作った最高級の浮遊石を渡したのに、使いこなせないとは宝の持ち腐れだな」
ナザの冷たい視線を受けて、パスターカは首を竦めた。
カシリアとキトは顔を見合わせて、笑っている。
「使い方が……分からなくて」
口ごもりながらパスターカが言うと、ナザはフンッと鼻で笑った。
賢人、カンジガワルイ、とパスターカは思った。
「浮遊石は身につけた人物の特徴を自ら掴んで、その人物が思ったり願ったりしたこと、主に移動ですが……、叶えてくれるんですよ。だから通常は、何もしなくても浮遊石を使えるはずなんです。パスターカくんも今朝、ナザの部屋に移動できたでしょう?」
通常は、って。
自分の両親が作った浮遊石を使いこなせないからだろうか。とうとうサリも少しだけ、自分をフォローしてくれなくなった、とパスターカは思った。
「あれは、オレが助けてやったからだろ?」
ナザが再び、フンッと鼻を鳴らした。
この人、馬かな?
さっきから、フンッ、フンッと言っている。
パスターカがナザを見ながらそう思っていると、突然ナザがパスターカの鼻をつまんだ。
「おい。人を馬鹿にした目で見るのはやめろ」
「ばっ、バカになんか……」
「してないか?」
パスターカを覗き込んで、ニヤリとするナザに、思わず素直に答えた。
「ちょっとだけ、してました」
途端にナザがげんこつでパスターカのこめかみをグリグリする。
「イテ。イテテテ。ごめんなさいー。痛いー」
ふざける賢人とパスターカ。
一行から、緊張感や悲壮感がなくなった。
そこへ、ビッグ・グレイがどこからともなく飛んできた。
パスターカの前に舞い降りると、頭ををグリグリと押し付ける。撫でて貰いたそうだ。
「ビッグ・グレイ! 久しぶりだな。頭痒いのか?」
頭を撫でながら、悪気なく失礼な事を言うパスターカにグァグァグァ、とビッグ・グレイが不満そうに鳴いた。
ひとしきり撫でて貰って落ち着くと、ビッグ・グレイはトコトコとカシリアの前に行く。
そしてカシリアをじっと見つめた。
「ただいま、ビッグ・グレイ。ここをずっと守ってくれてありがとう。私を覚えているかな?」
そう言ってカシリアは膝を折り、ビッグ・グレイに挨拶した。
ビッグ・グレイも大きく羽を広げて頭を下げた。
まるで王族同士のような挨拶に、パスターカが思わず尋ねた。
「ビッグ・グレイって、ここを守っていると聞きましたけど、何者なんですか?」
ビッグ・グレイとの挨拶を終えたカシリアが、答える。
「建国の祖であり、この国の護りであり、鍵である、と言われています」
護りは分かるけど、建国の祖???
コイツ、鳥だよね???
胸に秘めるべき失礼な疑問は、衝撃的過ぎたせいか素直に口から出た。
「建国の祖??? コイツが??? 」
言った途端に、ビッグ・グレイがパスターカをジロリと睨む。
そしてカパッ゙と口を開け、パスターカの頭を咥えた。
「イテテテ。ビッグ・グレイ、痛い、痛い。食わないで。食っても俺は旨くない、多分……」
ナザがフンッと鼻で笑った。
「自業自得だ」
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