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先鋒、巨大手
ふざけつつ、気を抜かないよう玉座へ向かう。
サリは一行の話に微笑みながら、城内の罠を素早く見つけて解除していく。
呪文も唱えていないように見えるのに、次々と解除されていく罠にパスターカは、驚いた。
賢人って凄いんだな。
玉座に近づくに連れて、重苦しい空気が体にまとわりついてくる。
息が吸いづらい。パスターカが口をパクパクしていると、チルがパスターカの背に手を当てた。
「抜呪・祓邪気・清体気力」
途端に息が吸えるようになった。
「呪い払いと体力気力の補充だよ。こんな冒険者みたいなことをするのは、久しぶりじゃな」
チルが笑う。
「チル、ありがとう」
パスターカは、大きく息をついた。
「パスターカは呪いをかけられているから、呪いの根源に近づくにつれて、呪術効果が高まってしまうのだろう。だが、安心せい。都度都度、呪いを祓ってやる! 私がついてきたのは、そのためだからな」
チルの言葉にパスターカの体も心も軽くなる。
仲間って大事なんだな。
そう思った瞬間、ビッグ・グレイが鋭く鳴いて羽ばたいた。
振り返ったパスターカは、空中に大人の男よりも尚大きな、手を見た。
その手が背後から、ナザをを掴み取ろうとする。
「現槍・突刺!」
パスターカは夢中で叫んだ。
現れた鋭利な槍が巨大手を突き刺そうとしている。
オガノラとは長期戦になるかも知れない。
気力、体力を補充させるチルの魔力も、ナザやサリの魔力もやたらに消耗させてはならない。
とすると、どうでもいいモンスター相手になれるのは自分しかいない。
瞬時にそう判断したパスターカは、巨大手に対峙する。
玉座の間の前で現れた巨大手は、呪文で動く槍を面倒そうに払い除ける。巨大手に弾かれて飛んできた槍を、パスターカはジャンプして掴んだ。
その体を、急降下してきたビッグ・グレイが背に乗せる。ビッググレイのおかげで、空に浮かんでいる巨大手と同じ高さになったパスターカにナザが叫んだ。
「パスターカ! 親指を狙え!」
「飛貫刺・割砕・粉風吹消!」
そう唱えながらパスターカは、槍を持った右手の力を込めて狙いを定める。
ブゥン、と音がしてパスターカの手元から巨大手に向かって勢いよく槍が飛んで行った。
ナザやサリが巨大手の動きを封じる呪文を唱えている。封じ込められまいと巨大手の意識が二人に向かっていたのも良かったのかも知れない。
槍は巨大手の親指を仕留めた。
グゥオワァァァァァァァ!!!!!
叫びにも似た耳障りな悲鳴が轟く。
叫びはビリビリと振動し、玉座の間の扉が開いた。
巨大手は、槍が刺さった親指からシュウシュウと煙が上がっている。
ピシ、メキメキ、と音がして手全体が黒ずみ、亀裂が入り、一気に砕け散った。
巨大手を倒した!
そう思う余裕もなく、玉座の間から禍々しい大量の瘴気が流れてきたのを感じて、一行は玉座の間に入る。身構えながら、一行が入った途端に玉座の間の扉は、ギィと音がして、勝手に閉まった。
即座にチルとキトが皆にプロテクト呪文をかける。サリは、部屋に貼られた罠を高速で解除していく。
「現姿・嘘無・オガノラ」
ナザが大きな声で呪文を唱えると、黒い煙の中にゆっくりと人型が浮かび上がってきた。
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