魔法文官士パスターカ 2

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魔法文官士パスターカ 2

「仲間など、何になる。私はいつだって一人だった。足を引っ張ろうとする輩、上手くいったことを妬む輩。側にいても役に立たない仲間など、いても仕方あるまい? 現に今お前は一人で私と向き合っている。仲間が何をしてくれている? パスターカ、私が思っていたよりもお前は力があるようだ。 仲間が必要なら、私と組めばいい。二人の王国を作ろうぞ」  パスターカはオガノラを悲しげに見つめる。 「オガノラ。君は間違った。殺したくないのに師匠のメニを殺した。罪の意識からどんどん悪い方に行ってしまった。メニは君を最後まで愛していたのに。君はメニの言葉を受け入れようともしなかった。ナザだって、ずっと君を庇って来た。君が尊敬する兄弟子だと思っていたから。だからどんなに君から理不尽な対応を受けても問題にしなかった」 「私には仲間などいない。師匠もいない。メニと言う爺さんは、自分の呪力が足りなくて命を落とした。私のせいではない。私の呪力が優っただけ。仲間など居なくとも、生きていける。己を信じればいいだけだ。お前もすぐに分かるだろう。天井で、床に転がったお前の仲間とやらの亡骸を目にすればな。力のない仲間の最後を眼に焼き付け、絶望にその身を捧げればよい」 「俺の仲間は、最強なんだ。賢人のナザ、サリ。癒手(ヒーラー)のチルやキト。この国の正統な後継者のカシリア、皆、自分の為ではなく、人の幸せの為に動ける人たちだ。落ちこぼれの俺を仲間に入れてくれた、そして自信を持たせてくれた、最高の仲間だ! オガノラ、君の魔術くらいじゃやられる訳がない!」  そう言ってパスターカは部屋を指差した。  床を、天井を。  オガノラの黒い剣に刺され、床に倒れ付したナザの姿はなかった。  天井に巨大吸血蜘蛛でミイラのように吊るされたサリ、チル、キト、カシリアの姿もなかった。  それどころか、羽を絡め取られて床に落ちたビッグ・グレイの姿もなかった。  オガノラは辺りを見回す。 「……ッ! なぜだ? 奴らは、どこに?」 「君は自分が見たいものしか、見ていなかった」  落ち着いて話すパスターカにオガノラが目を釣り上げる。 「どういう事だ?」 「君は最初から、こちらの呪文の中にいた。ここ、玉座の間に君が張った魔法空間を解除して、サリが張り直した魔法空間。だから、君がここで見ていた物は、ホンモノじゃない。それに気づかなかった時点で君の負けだ、オガノラ」 「そんな事が信じられるものか、私の長年の空間呪文を解除しただと?」 「俺の仲間はそれができるんだ。俺は、ナザやサリ、カシリアを苦しみから解放したいんだ。苦しく悲しい想いをした彼らに、二度と同じ想いはさせたくない。だから今、俺は君と二人でここにいる。君と俺の仲間が対峙しちゃうと、敵を討つという展開になっちゃうだろ? 俺はそれをさせたくなかった。だからね、」  丁寧に話していたパスターカはそこで言葉を切る。そして、言った。 「俺は、君も解放したい。」 「さっきからふざけた事ばかり、言いおって。解放すると言うのは私と組むと言う事か、しょせん小僧よ」  フッと笑うオガノラに、一歩近づいて言い放つ。 「君は、君の呪縛に掛かってる」
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