メニへマーガレットの花束を

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メニへマーガレットの花束を

 マーガレットの花束をメニの墓に供えて、ナザが呟く。 「メニ、あなたは見通してたんですか? オレには無理だったけど。オガノラは、あなたの望み通りになりました。正直、複雑な気持ちです。俺はパスターカ(アイツ)を見捨てる気はないので。間接的に、オガノラを面倒見ることになるのでしょうね。サリもカミリアン王もパスターカの判断に納得しています。俺が。俺の気持ちだけが、置き去りのままで……」  胸に込み上げた気持ちが溢れて、ナザは唇を噛んで空を見上げた。 「ナザーーー!」  大声に振り向くと、パスターカが走ってくる。  腕に抱えきれないほどのマーガレットの花束を抱いて。 「サリからナザがここだって聞いたから。俺も大師匠に挨拶しようと思って」  笑顔でナザに言うパスターカに、ナザが尋ねた。 「何で、マーガレットの花束にしたんだ?」  パスターカは首を傾げた。 「そう言えば、何でだろ。なんか、マーガレットって強く思っちゃったんですよね。この花だ、って。俺、花のこと知らないんですけど。綺麗で可愛らしい花だな、って」  ナザに笑顔を向けて言う。  一瞬、パスターカの瞳が朱色に見えた。  もう一度パスターカを見た時には、いつものブルーブラックの瞳に戻っている。  オガノラ。  お前の仕業か?  メニの好きな花をパスターカに選ばせたのは。  浮かんだ疑問は口に出さずに、ナザはパスターカの髪をクシャッと撫でた。 「よく祈っておけよ。もしかして。万が一。メニがお前に加護をくれるかも知らんからな。……とは言え、この先は本人の資質と努力で進んで行くしかないと思うが。本人の資質が薄いんだから、努力で賄えよ」  パスターカはメニの墓にマーガレットを供ながら、大きく頷く。 「サリから、魔法学校講師のお仕事をいただきました。来週から、学校へ、呪文学を教えに行きます。」 「呪文学ぅぅぅ? お前が? 本気か? パスターカ! 断わるなら今の内だぞ」 「うぅ、それ、キトにも言われました」 「皆、言うだろうな。オガノラに使った会話呪文とか、もう理由が分からんからな。あれは呪文じゃなくて、ただの人たらしだろ」  ナザが笑う。  ナザの笑い声を聞いて、パスターカは嬉しかった。  メニの墓に祈る。  メニ、はじめまして。  俺、ナザの弟子のパスターカです。  訳あってオガノラと同居体です。  これで、良かったんですよね?  俺は、ナザや俺の大事な人たちを守れる人になりたいです。  どうか、見守っていてください。  メニへの祈りを終えたパスターカに、ナザが話しかけた。 「ところでどんな呪文を教えるんだ?」  パスターカは元気よく答える。 「そりゃあ。使い回し呪文です!」    パスターカの魔法文官士としての道のりは、始まったばかりだった。 了    
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