廃墟でビッグ・グレイと出会ってトモダチになる

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廃墟でビッグ・グレイと出会ってトモダチになる

 珍しくサリが一人でパスターカを訪ねて来た。 「パスターカくん、今日は僕と出掛けてみない?」  サリの申し出はパスターカにとっては願ったり叶ったり。サリはNo.2の賢人だ。きっと勉強になるだろう。大喜びで承諾する。  二人は街中を通り抜け、郊外にやって来た。  黙ってサリの後を歩いていたパスターカが足を止めて息を飲んだ。 「ここ……」  サリは驚いているパスターカに優しく説明した。 「来たことがないだろう? 祝福された魔法都市パセラの負の一面だよ。歴史書からも抹殺された、ね」  パセラ郊外にある山の麓の暗渠(あんきょ)を通って歩き、そこからサリの呪文によって押し広げられた空間に入った。  パスターカの眼前に広がっているのは、廃墟の国。城、街全てが朽ち果てている。 「この間、国立図書館にソルトゴーレムが出現したでしょう? 本来「国立」の建物には厳重な守護魔法呪文がかけてあってね。モンスターが出現するはずがないのだけれど……」  一つの町が朽ち果てている事に衝撃を受けて、パスターカは言葉もなく立ち着くし、サリの言葉を聞いている。 「あれ以来、パセラのあちこちでモンスターが出現するようになってね。今のところ、出現モンスターのレベルが低いから大事に至ってはいないのだけれど。調査した結果、ここが原因となっているのではないかと言う結論に達したんだ」  パスターカは屈んで廃墟の土を触る。  地面が焦げている。  地面どころか、建物、城まで黒く煤け、全体的に黒く見えた。  どれだけ焼かれたら街がこのような姿になるのだろう。何がきっかけで、国が滅びるほど焼かれのだろう。この国の人々はどうなったのだろうか。 「何があったのか、オレにも教えてください」  クァーオオォウ。  奇っ怪な鳴き声と共に、廃墟の彼方から大きな怪鳥が飛んできた。  怪鳥は、足詰めだけでパスターカの身長くらいあり、羽ばたきの威力だけで身体ごと飛ばされそうになる。 「パスターカくん、傷つけてはいけないよ。この乱暴な鳥はここを守る聖鳥だ」  大きな怪鳥に怯えもせず、サリが眼の前に舞い降りた怪鳥の嘴を撫でながら言った。  怪鳥は撫でられて、気持ち良さそうにグググゥとくぐもった声で鳴く。 「彼はビッグ・グレイ。この街の守護聖鳥で、未だにこの街を守っているんだよ。滅多に姿を現さない子だから、パスターカくんは貴重な体験をしたね。あぁ、ビッグ・グレイに触ってはダメだ。彼は警戒心がとても強くて、見知らぬ人間には…………」  サリは、言いかけてやめた。  涙を流しながら、パスターカがビッグ・グレイを撫でている。 「俺はこの街がなんでこんな事になったのか、知らない。でも、こんな廃墟になってまで、一人で守っているの、辛いよな。おまえは、凄いな」  ビッグ・グレイは静かに頭を下げた。  パスターカはビッグ・グレイの首に抱きつき、ヨシヨシとばかりに撫でる。  ビッグ・グレイがパスターカの髪を嘴で撫でる。  かと思うと、パスターカの上着を咥えて、ブンッと首を振った。  投げ飛ばされて宙を浮くパスターカ。  着地した先はビッグ・グレイの背中だった。  パスターカが体勢を整えるのを確認してから、ビッグ・グレイはふわりと羽ばたいた。  パスターカはビッグ・グレイと共に、またたく間に廃墟の上空にいた。廃墟の全貌が見える。一箇所たりとも煤がない場所はなかった。  上空を旋回して、ビッグ・グレイはサリの前に降り立ち、パスターカを背中からおろした。 「こんな事が起こるなんて。パスターカくん、キミは本当に予測のつかない子だね。今日キミとここに来ることができて良かったよ」  ビッグ・グレイに抱きついているパスターカを見ながら静かにサリが呟いた。
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