ふたりの気持ち

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「家まで送る」 「あ、駅まででいいよ」 「なんで、家知られたくないの?」 「そ、そんな事ないけど・・・」 「じゃあ決まり。どっちに行ったらいい?」 一ノ瀬クンの言う事に何故か逆らえない私。 私の方が年上だって言うのに。 事務室に来る彼は、いつも何かを失くしたりして、私が面倒を見ている立場だから子供っぽく見えていたけれど、今此処にいる一ノ瀬クンはいつもよりずっとしっかりして見えるのは何故だろう。 私はずっと主導権を握られている様で、言う事を聞いてしまう。 でもそれが嫌な訳ではなくて、寧ろ一ノ瀬クンが私を引っ張って行ってくれるのが嬉しかった。 道案内をしながら、助手席でなんだか彼女になった様な気分になる。 そんな風に思った自分が恥ずかしくなって、一人でうろたえる。 「あ、単位取れたお祝いはしたけど、就職はまだ決まってないんだよね?」 そんな気持ちに気付かれない様に、慌てて会話を振った。 「あぁ、就職ね」 「事務室に求人来てるから、見にきたら?」 「うーん、考えとく。ありがと」 一ノ瀬クンが急に私の頭に手を乗せて、私の髪を自分の指に絡め取った。 「あっ、」その感触が気持ち良くて、顔が赤くなるのが分かった。 あー、もう昨日からずっと彼のペースに乗せられている。
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