ベッドの中

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今はそんな事を考えている場合じゃない。 ここは何処なんだろう。部屋の壁、天井、床、ぐるぐると見まわしていた。 この人が起きる前に、ここから脱出したい。 とりあえず服を着よう。このままじゃ外には出られない。 服を探したけど見える範囲には昨日来ていた筈の服はない。 記憶が抜け落ちている割には、昨日の服をはっきりと覚えていた。 彼の向こう側に落ちているのかも? でもこの格好で彼の上を通るのはまずいよね。 布団の上に白いシャツが1枚あった だぶん彼のシャツだ。 私は仕方なくそのシャツに袖を通した。 シャツからは彼の匂いがした。多分、彼の匂い。 何かのテレビでやっていた。 相手の体臭が嫌じゃなかったら、恋愛はうまくいくって。 彼の匂いは私のすきな香りだった。 私は襟ぐりに鼻を近づけて、そこに残る彼のかをりを嗅いでいた。 彼の体臭を感じながら私はそっと布団から出た。 彼が起きる前に此処から立ち去りたかった。 ベッドの向こう側に回って、自分の服がないか確かめる。 何もない。 私の服はどこにあるんだろう。 彼の服もシャツ意外は、此処にはないみたいだ。 仕方なくこの部屋に唯一あるドアに向かって静かに歩いた。 「ガチャッ」  ノブに手をかける。 彼が起きてないか振りむいて確かめる。 まだ寝ている。布団が微かに上下していた。
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