ふたりの気持ち

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「今日はどうしましたか?」 「学生証忘れました。すみませんっ」 彼は身体を45度曲げてお辞儀をした。 「またですか~」 私は彼を優しく睨む。優しくなので結果としては睨んではいない。 「今日、教授室で打ち合わせあるんだ」 また、大事な日に限って忘れるんだから。 学生証を持っていなくても、教室やカフェテリア等は誰にでも入る事が出来る。 だから、カフェテリアなんかは一般の人にも開放していて、誰でも食事が出来る。 でも教授室には学生証がなければ入れないように、セキュリティを強化している。 「じゃあ、これに記入して」 入館証貸出の用紙を差し出す。 「書き方わかるよね」 そう言いながら、わざと彼の顔を見る。やっぱり私好みの端正な顔。 「はい、わかります」 彼がボールペンを持って記入を始めた。 黒縁の眼鏡、その奥にあるちょっとクールだけど優しい瞳、触ったらフワフワそうな少し明るい色の髪、多分180センチ位あるだろう身長。 ほぼ全てが私の好み。 というかいつの間にか、彼が私の好みのタイプになってしまったんだと思う。 「書けたよ。逢坂さん」 我に返る。彼が書類から目を離して、私を見たので、目が合ってしまう。 あ、もう無理。その瞳で私だけを見ていて欲しい、なんて思ってしまう。 「どうしたの?大丈夫?何回も書いてるから間違ってないと思うよ」 「は、はい」 私は手に汗をかいていた。 ろくに書類を確認しないまま、入館証を差し出した。 「はい、返却忘れないようにね」 平静を装い彼の手に入館証を渡した。
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