ふたりの気持ち

5/11
前へ
/32ページ
次へ
画面には「犬堂」の表示。 え、なんだ。あいつは今ニューヨークの筈だけど。 「Hello」 わざと英語で応対する。 「アハハハハハハハ」 電話の向こうで大笑いが聞こえて来た。 「朝からテンション高いな。良い事あったの?柚香ちゃん?」 「おい、気安く呼ぶなよ」 なんか最高の気分だったのがちょっと下がった。 「ちゃんと、ちゃん付けてんじゃん」 犬堂が不機嫌な声を出した。 「逢坂さんと言え」 冗談半分だけど、仲のいいこいつにさえ、彼女の名前を呼ばれたくないなんて 凄い独占欲の自分に改めて驚く。 「どうした?こんな時間に」 「今、大丈夫か?」 犬堂の声が真面目になった。仕事の話だ。 「今大学だけど、5分位なら」 「やっぱ、柚香じゃん」 俺を煽るように、あいつが柚香の名前を呼び捨てにした。 「アホ。早く言えよ。5分だぞ」 「了解」 犬堂の声が仕事モードにチェンジした。 「この前相談したあの会社の株、買おうと思う。どうよ?」 「あれから俺も色々調査した。良いと思う。急成長って訳じゃないけど、 却ってその方がいいんじゃないかな」 「俺もそう思った。じゃあGOだな。一ノ瀬CEO」 「おい、それやめろよ。単なる名目上なんだから」 「はい、はい。わかりましたよ」 「金額に関してはお前に一任する。CEO命令だ」 「了解。じゃあまた連絡する。柚香ちゃんに宜しくな」 また、あいつに煽られる。 「うるさいな。宜しくなんて伝える訳ないだろ」 「俺も会ってみたい。お前がそんなに真剣になるなんて初めてだよな」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加