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画面には「犬堂」の表示。
え、なんだ。あいつは今ニューヨークの筈だけど。
「Hello」
わざと英語で応対する。
「アハハハハハハハ」
電話の向こうで大笑いが聞こえて来た。
「朝からテンション高いな。良い事あったの?柚香ちゃん?」
「おい、気安く呼ぶなよ」
なんか最高の気分だったのがちょっと下がった。
「ちゃんと、ちゃん付けてんじゃん」
犬堂が不機嫌な声を出した。
「逢坂さんと言え」
冗談半分だけど、仲のいいこいつにさえ、彼女の名前を呼ばれたくないなんて
凄い独占欲の自分に改めて驚く。
「どうした?こんな時間に」
「今、大丈夫か?」
犬堂の声が真面目になった。仕事の話だ。
「今大学だけど、5分位なら」
「やっぱ、柚香じゃん」
俺を煽るように、あいつが柚香の名前を呼び捨てにした。
「アホ。早く言えよ。5分だぞ」
「了解」
犬堂の声が仕事モードにチェンジした。
「この前相談したあの会社の株、買おうと思う。どうよ?」
「あれから俺も色々調査した。良いと思う。急成長って訳じゃないけど、
却ってその方がいいんじゃないかな」
「俺もそう思った。じゃあGOだな。一ノ瀬CEO」
「おい、それやめろよ。単なる名目上なんだから」
「はい、はい。わかりましたよ」
「金額に関してはお前に一任する。CEO命令だ」
「了解。じゃあまた連絡する。柚香ちゃんに宜しくな」
また、あいつに煽られる。
「うるさいな。宜しくなんて伝える訳ないだろ」
「俺も会ってみたい。お前がそんなに真剣になるなんて初めてだよな」
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