九月のバッタ

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 お母さんが車を出してくるのを玄関先で待っているとトミが何事かとやってきて何やらワンワン言っている。  どうやら一緒に行きたいみたいだ。  「ややこしいから家で待っとうと?」  なんて言うと紺色のスカートのお尻の辺りにトミの手形をいっぱいつけられてしまう。  「なんや、トミも行くんか?」  お母さんに邪険にされながらも後部座席の自分の席に乗り込んでいく。  集会所に到着したのは式典の始まる直前である。お祝い品の受け渡しを待つ人で八幡神社に隣接した小さな集会所はお祭り騒ぎになっている。  我が集落と隣接するふたつの集落の全戸併せても百何十家族しか住んでいない。なのに、ざっと見た感じでは八十人くらいは軽くいそうな勢いだ。学校の全校朝礼を除いては恐ろしい人口密度になっている。  しかも、おじいとおばあばっかである。間違いなくあたしが最年少記録だし、お母さんですら世話役の人も入れても若者ベスト五には入っている。  ニュースで少子高齢化社会とは聞くが、その現実を目の当たりにしたのである。我が集落の絶望的な高齢化率である。  「こりゃあ、耕作放棄地ばかりになるのも無理ないか……」  中学生がする創作のネタにしては深刻過ぎる。まさに滅びゆく故郷の光景を描く筆力は今のあたしにない。
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