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八月三十一日、二十三時五十分。
高校二年の夏休みがあと十分で終わる。
テレビのモニターには「YOU WIN!!」の文字が輝いて、俺の夏の間の努力を祝福していた。オンラインの対戦ゲームにハマりすぎた俺は、毎日寝る時間も惜しんでゲームにい没頭し、ついにランキング100位以内に食い込んだ。
「あー、マジ頑張った俺。すげえよ俺。やればできる子じゃん」
喜びと達成感に包まれて、大きく伸びをする。そのときにふと目に映ったのが、机の上のデジタル時計の 8/31 23:50 という表示だったのだ。
「夏休みも終わりかー。宿題、なんもやってねえや」
今からやったところで、朝までにひと科目も終わらないだろう。それが分かっていたから、俺はマットレスにごろりと横になった。置きっぱなしになっていた読みかけのマンガ本を手に取って開く。
「めんどくせえ。学校行きたくねえ」
来年は高校三年生――受験生だ。遊んでいられる夏は、今年まで。その大変貴重な、人生で一度切りの高二の夏休みが終わってしまうわけだ。ほぼゲームのせいで。
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