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俺はやりたいこともはっきりしないまま、なんとなく入れそうな大学に入って、卒業したら適当な会社に勤めて、平凡な人生を歩むのだろう。
「あー、行きたくねえ。学校、マジで行きたくねえ」
担任の小畑(おばた)の辛気臭い顔が脳裏をかすめた。小畑は英語の担当で、自分はほぼカタカナみたいな英語しか話せない三流教師のくせに、小テストの点数が悪かったり課題を出さなかったりする生徒にはネチネチと嫌味を言ってくる。
せめて英語の課題だけでもやったほうが傷が浅くて済むと思ったが、すでに時刻は二十三時五十五分を回っている。夏休みの寿命は残り五分。シャーペンを握るエネルギーはこれっぽっちも湧いてこない。
「夏休み、終わらないでくれ。九月一日、来るんじゃねえ」
マンガを置いてごろごろしながら、バカげたことをつぶやく。
「マジで九月一日来るな。九月一日消えろ」
マットレスの上で大の字になって、ぼんやりと天井を見上げる。小畑の嫌味、受験勉強、つまらない人生、何もかもが面倒になった。
23:59と表示しているデジタル時計が恨めしい。
「嫌だ。九月一日、来ないでくれ」
願いも虚しく、ついにディスプレイには 9/1 00:00 と表示された。
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