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「なにお前、俺の写真ぜんぶ消したの?」
「当たり前じゃん」
「ふざけてんな?」
「お前がな」
先週、私の携帯を勝手に弄っていると思えば、自分の自撮りや、みんなで撮った写真などを転送してきて、それを勝手に保存していたのだ。
彼の写真でフォルダーがいっぱいになるのを夢見ていたから、内心嬉しかったけど、私は決してその感情を表に出さずに嫌な顔を浮かべた。
家に帰ってからズキズキとした胸の痛みに気づかないふりをして、彼の写真を全部消した。それが今、彼にバレてしまった。
「なんで消すんだよ」
「いらないから」
「本当、酷いな?」
「すみませんねー」
「めっちゃ棒読み。だからお前は変に誤解されるんだぞ」
今のキャラクターを演じすぎて、友達じゃない人からは怖いだの、先輩からは凄く生意気だの言われていることが多い。大概は話しをして誤解だったと言われることが多いけど、煩いほど騒いでいるグループに所属していて騒がずいつも携帯を弄っている私は、当然誤解されてもおかしくはないから今では放置している方が多い。
「別に……誤解されてないし」
「されてるだろ。お前があのグループ支配してるとか、いつも携帯弄ってるのは下の奴ら動かしてるとか、やばい先輩と繋がってるとか言われてんだから」
「……もし、それが本当だったら?」
「本当のわけないだろ。お前はそこまで変わってないし、お前がいつも韓国の食べ物調べてるのこっちは知ってんだぞ」
彼は、人を沼に引きずり込ませるのが上手い。
こうやって誰かしら見てくれてるって知っているから、私は誤解をされたままでいてもいいと思ってしまうのだ。
「てことで、写真撮ろうぜ」
私にぶつかるように距離を詰めてきた為、すかさず距離を取ろうと椅子ごと彼を離そうとするが、許さないとばかりに腕を掴まれる。
たったそれだけで、私の胸が高鳴るのには十分すぎた。
「……なに」
「だから、写真撮ろうぜって言ってんだよ」
「2人で?」
「そう。2人で」
本当、馬鹿じゃないの?
でも、そういうところが好き。
「嫌だけど」
「なんでだよ」
「写真嫌いだから」
「嘘つくな。あいつらといつもノリノリで写真撮ってんだろ」
「あれは仕方がなくだから」
実際は仕方がなくではない。
決して、ノリノリでもない。
消さなくてもいい写真を撮るのに、どうして断らないといけないのか分からないだけ。
「そんなに俺と撮るの嫌かよ」
「うん」
嫌に決まってるでしょ。
家に帰って、泣きながら写真を一つずつ消していくんだよ?
だったら最初から写真なんて撮らない方がいい。
「即答とか。前までは死ぬほど撮ってただろうが」
「前は前。今は今」
「マジで頑固。まぁ、そういうお前が好きなんだけどな」
彼の発言と共に、下校を知らせるアナウンスがスピーカーから聞こえてくる。
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