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あの時頷いていたら、今頃私はどうしていただろう。
そんな「もしかして」がふと浮かんだが、すぐに頭の中から振り払う。
あのひとときは、数時間という短い間の出来事だったからこそ甘酸っぱくときめいて、キラキラしていたのだ。
そう結論づける自分に苦笑しながら、私は窓の外に目を向けた。
刷毛で掃いたような雲が青空に浮かび、その間を縫うように何本もの飛行機雲のすじが走っていた。その先に銀色の小さな光を見つけて、私はぼんやりと目で追う。
あの飛行機はどこまで飛んで行くのだろう。
彼は今日もまたあのロリポップを手に、ガイドの仕事をしているのだろうか。
恋にも発展しなかったひと夏の恋、か。
どことなくセンチメンタルな気分になってしまうのは、きっと季節が移ろおうとしているからだ。
ロマンティックな気分に浸りかけた自分を愛おしく思いながら、私は水着を片づけるために立ち上がった。
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