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「……謝って済む問題じゃ、ないでしょ?」
申し訳なさそうな表情を浮かべる貴将に、頭を抱えながら問い掛ける。
「本当にごめん……」
「ごめんって謝るくらいなら何でこんな事するのよ?」
「お姉ちゃん、貴将くんは悪くないの! 私がいけないの!」
「いや、有紗ちゃんのせいじゃないよ、俺が悪いんだ」
私が貴将を責め立てると、間髪入れずに有紗が彼を庇い出し、それを制して自分が悪いと口にする貴将。
この際、どっちが悪いとかそんな事は問題じゃない。
私が問いたいのは、何故、こんな事になっているのかという事なのだ。
「……いつから?」
「…………二週間前、初めて有紗ちゃんに会った日の後で、偶然、再会して……」
「私、色々悩んでて、相談に乗ってもらってるうちに……貴将くんの事、好きに、なっちゃって……」
「勿論、初めは断った! けど、何度も誘われて……一度だけで良いからって、言われて……」
「それで、寝たの?」
「……ごめん」
『ごめん』と謝りながら、貴将はもう、決めているのだ。
この後に、どの言葉を口にするのかを。
「それで、どうしたい訳?」
「――本当に申し訳ないって、思ってる。亜夢の事は、本気で好きだった。けど、今は、それ以上に……有紗ちゃんの事が、好きなんだ……」
そう、一度寝ただけで終われば、まだ良かった。
二人の関係も、知らずに済んだかもしれないから。
でも、一度だけで終わらなかったという事は、私よりも有紗を好きになったという事で、
そうなると、
私よりも有紗を選ぶに決まってるのだ。
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