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物語の結末というのは非常に呆気ないものだ。
私は窓から見える雨を見ながら一人黄昏ていた。今週一週間はずっと雨との予報だったため翌日である今日ももちろん雨が降っていた。秋雨前線が停滞しているのだろう。
しかし、今日は濡れることがなかった。数年ぶりに、私は乾いた制服で雨の日を過ごすことができていた。昨日行われた席替えにより隣にいた金竜は廊下側の席にいる。私は同じ場所をキープできたので彼女とは最も離れた位置にいた。
横目で金竜を見ると、いつもの連中と楽しく会話している。私なんて最初からいなかったかのようにすっかり興味は消え失せていた。昨日の事件がよっぽど彼女に影響を与えたらしい。暴君も民衆からの危険に晒されれば更生するみたいだ。
「ねえ、冬花ちゃん。宿題見せてもらっていい?」
金竜を見ていると隣の席にいた朝宮が私にねだるような視線を送る。私は彼女に冷たい視線を送ると机の中からノートを取り出した。
「帰り、飲み物奢ってね」
そう言って、朝宮にノートを差し出す。
「えー、それはずるいよ。私、金欠なんだよ」
「やってこないのが悪い。世の中は対価交換なのよ」
「えー、そんなー」
悲しそうにノートを受け取る朝宮を見て、思わず唇が綻びた。
「うそうそ。私はもう春陽からたくさんのものをもらったから、タダで見せてあげるよ」
「ほんと! やったー! じゃあ、明日も見せてもらうね」
「あまり調子には乗らないこと」
「はい。すみません」
朝宮は自分のまっさらなノートを広げると私のノートを写していった。
世の中、嘘をつけば都合のいいこともあるし、知らない方が身のためなこともある。
でも、それらを全て無視して飛び込んでくれる存在というのは、当事者にとってはとても嬉しいことだ。
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