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エピローグ
それから1年後――
宣言通り姿を見せることのなかった兄貴の代わりに、僕の腕の中には奥さんとの間に生まれたばかりの新たな命が抱かれていた。
やけに元気なんだよなー。
しかも、笑い方が何かと意味深で(笑)。
あー、この表情どこかで見た覚えが……
どこだったっけかなー?
……ん? 待てよ。も、もしかして――
「兄貴っ?!」
急に大きな声で叫ぶ僕に驚く様子もなく、それどころか真っ直ぐな眼差しで僕の目を見つめてくる赤ん坊。
「な、なんてね~。おんなのこでちゅもんね~、兄貴だなんてねぇ」
あまりに真面目な顔で僕を見ている娘をあやしながら、慌ててその場を取り繕う。
赤ん坊相手に何取り繕ってんだか良く分からないけど。
が、次の瞬間、娘は僕の顔を指さし
「だぁ~っ!」
にこにこと無邪気な笑みを浮かべるのだった。
今年の夏の終わりが人生の始まり――ってか?
……ははは、まさかな。
冗談きついぜ、兄貴。
終わり
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