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限りなく始まりに近い終わり
「なーにが『さらば、だぁ~っ!』だよ。どうせ来年も同じ時期に顔見せに来るくせに」
何が、吉報……なんだよ。
毎年切なくなるんだ。
この時期になるとやって来る、僕にしか見えない兄貴。
僕の代わりとなって命を落とした――大好きな兄貴。
兄貴の消えた空間を見つめたまま深くため息を吐く僕の頬を、秋の匂いを纏った涼やかな風が優しく撫でるように吹き抜けて行く。
「あーぁ、今年の夏も終わりか~」
僕はわざと声に出して、その場で大の字になって寝転んだ。
そしてゆっくりと目を閉じる。
そうだよな……夏が終わるから秋が来るんだもんな。
心地よい風に吹かれながら、僕はいつの間にかうとうとと眠りに落ちていた。
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