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私の知らない誰か。
「お宮ちゃん!団子一個!」
「はい!」
今日も開店してすぐに、お客さんが来る。
私は甘味処の看板娘。
本来は甘味処なんて働かなくても生きていける。だから数日前まではやめようと思っていた。が。
「・・・、お宮。」
「あ、河島さん!」
そう。私目当てのお客さんができた。
河島小太郎さん。
毎日毎日来ては、落雁だけ買って帰っていく。
腰に差した2本の獲物からして、どっかの侍さんで新選組から逃げてる。
涼しげで律儀、美青年の三拍子が着物を着て歩いているようなものだ。
一つ、あるとすれば無口。
喋るときは喋るが、返事が遅い。頭の回転が遅いわけじゃないっぽいけど。
「・・・今日も落雁を、10。」
「了解しました。」
紙に包む。
いつものように少しだけおしゃべりをして、帰っていく。
何者なのかも知らない。ただ。
いつも来てくれることが嬉しかった。
たとえ、「志」が違っても。
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