魔法専門学校ファンタジーラボ

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魔法専門学校ファンタジーラボ

一 「騎士物語」という小説がある。 「教会」に選ばれた「騎士」が邪悪な魔法使いである「魔王」を倒すべく冒険の旅に出て「魔王」を倒すというシンプルな内容だが、この小説には暗号がある。 「騎士物語」を読んだ子供たちは「魔王を倒した騎士こそ正義だ」と将来英雄になる事を夢見るがそれは正解ではない。魔王は強大な魔法使いの王様であるが支配はしていない、教会が支配の為に邪魔な魔法使いを抹殺しようとしており、何も知らない「騎士」をその道具に使った。謂わば魔王の信仰と教会の信仰による支配権の奪い合いを描いた話しである。その結果、教会の支配が勝利したというのが最初の暗号だ。 そして教会の支配の為に倒された魔法使いは、本当に「邪悪」なのか。騎士が魔王を倒さなければならない個人的な動機は存在しない。魔王を倒した事に何の報酬も支払われていない。魔法使いは悪くないというのが二つめの暗号。 最後に、上記の事を纏めると「騎士物語」は列記とした魔女狩りの正統化である。魔法使いは自分の信仰を信じていたかっただけ。これが最後の暗号であるが、しかしそこまで辿りつけたのはクライス・A・リンドバーグという十歳の少年一人だった。騎士物語に隠された暗号を解いた者だけが、ファンタジーラボという魔法の専門学校に招待されるという訳だ。 「それにしても随分大袈裟な送迎だな」 ファンタジーラボからの送迎は紙で作られた帆船だった。もしも、魔法に「レベル」という概念があるならば、この帆船を送って来たファンタジーラボは想像した以上にレベルが高い専門学校なのかもしれないとクライスは考える。水に使っただけで破けてしまうのではないか、人が乗っただけで穴が空くんじゃないか心配したが、大勢の人間が乗ってもびくりともせず、目的地との間を往復しているだけでも信じ難いが、海難事故に遭遇せずファンタジーラボの港に近付こうとしているのだ。こんな事が出来るのは強力な熟練魔法使いが学校にはいる事と、魔法を習得すればこんな事が自分で出来るようになるということは容易に想像出来た。 「でも凄いな。これが魔法なのか。とても信じられない」クライスは甲板の手摺りを触りながら呟いた。厚く頑丈だが確かに紙の手触りを感じる。魔法に直接触れるというのもなかなか奇妙な感覚だ。
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