魔法専門学校ファンタジーラボ

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「それにしても、どうして魔法の専門学校はこんな辺境の島なんかにあるんだろう」 船首の先に見える建物を眺めながら、少女は呟いた。 「魔法使いは騎士に追いやられ、辺境で暮らす事を余儀なくされた。だから孤島に学校を建てた。騎士物語では書いてなかったけれど、それが答えだと僕は思う、きみ名前はなんていうの?」 唐突に現れた少女にクライスは訊ねる。 「アメリ・T・アンリパブロ、アメリでいいよ」 「クライス・A・リンドバーグだ。恐らく、限られた人間だけが魔法を教わる事が出来る、魔法使いに理解のあるものだけが。そして魔法を継承させていく、後継者を見付けるのが専門学校の目的じゃないかな」 「魔法使いが後継者不足って騎士物語に書いてたの?」 「書いてない。教会の支配により魔法使いって伝統職は減ってしまった、それを教わる人も、このままだと魔法使いがいなくなってしまうと心配しているんだよ。きっと」 「わたし達はその後継者候補って訳か、行間が読めるんだ。さすが暗号を解読した人物だけはありそう」 アメリは甲板から見える海面を眺めた。魚の群れが船体を横切るように泳ぎ、左右に打ち出す波が帆船をゆっくりと揺らしている。本物の海の上を紙の船が進んでいるんだと思うと不思議な感覚だと思った。 「アメリだって解読したんだろう? 凄いじゃないか?」 「クライスほどじゃないけどね、十回も読破したけどそこまで読み込めなかった」 「十回も? 僕なんて五回読破したけどそこまで読んでいない。まだまだ足りないな」 「五回でそこまで読み込んじゃうのが凄すぎると思うけど」 クライスとアメリが話している間に、紙の帆船はファンタジーラボの港に到着した。先程まで立体の帆船だったものの帆がするすると畳まれ帆柱が甲板にすっぽりと収納される。二つに割れた甲板を挟み込むようにぱたんぱたんと二つに降り畳まれ、一枚の紙のようなぺしゃんこになり港の底に静かにしまい込まれた。ちょうど到着した他の帆船も同じように港に収納される。 「どうなってるんだ? 帆船が一枚の紙になってしまい込まれていった。一隻だけでなく他のも」 想像を遥かに越えた出来事にクライスは目を丸くするしかなかった。 「これってまるで『折り紙』の畳み方だけど、信じられない!」 アメリはぽかんとした表情で帆船が消えていった海の向こうを眺めながら呟いた。
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