監禁

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監禁

 王室宮殿の中にあるその部屋は元々王太子候補の為に作られたものであり、極めて厳重なセキュリティを誇る。  身の安全と国家君主としての勉学に集中させる為か、外部からも内部からも出入りがしにくい設計故、時には悪さをした王子王女のお仕置き部屋として活用されている程である。  そんな場所にてリネンの質素なワンピースを着せられ、カルディナは監禁されていた。 「失礼。入るよ」  ノックと共に端的に声を掛け、ヴォクシスは厳重過ぎる鍵を開ける。  手付かずの朝食と入れ替えるようにテーブルに湯気の立つ昼食を置き、彼は窓辺で虚を見つめる娘に歩み寄った。  殺意はなかったとは言え、王族である彼自身や元帥に銃口を向けたことから、彼女はクロスオルベ侯爵家本邸から戻ると同時に、この場所に収容された。  表向きは謹慎処分と言うことにはなっているが―――。 「…やっぱり話したくないのかい?」  跪いて力のない手を握り、困ったように微笑みながら訊ねる。 「…島に帰らせて…っ…」  返ってくる返答は常に同じだった。  彼女にとって天地喰らう者(デュアリオン)は相当恐ろしいものらしく、頑なにそれについて語ることを拒んでいた。 「怖がらなくて良い。私がいる限り君を…」 「嘘ばっかり…!今だって何も出来ないでいる癖にっ…!」  敵意のある目でキッと睨んだ直後、彼女はそっぽを向いた。 「カルディナ…」 「もうデュアリオンの調査は始まってるんでしょ?研究書もそっちにあるなら私が話そうが話すまいが一緒じゃない…!」  悔し涙を浮かべ、カルディナは冷たく言い放った。  彼女の言う通り、島で発見されたデュアリオン本体の大規模調査は既に始まっており、クロスオルベ侯爵家本邸で見つかった容れ物も王城近くにある軍管轄の研究所に運ばれ、その機能が暴かれ始めている。  現時点での報告を述べれば、容れ物そのものは魂授結晶が記録したものを再生保存する装置で、それにデュアリオン本体を接続することで、起動装置としての機能を発揮するように設計されていると解明されている。  デュアリオン本体についても、かなり高性能な戦闘機械で奪還作戦に使用したセルシオンの戦闘用ボディ以上の破壊力を有していることが既に解っている。 「…こんなことなら地下ごと燃やしてしまえば良かった…っ…」  握られた手を乱暴に振り払い、恨み言のように呟きながら彼女は膝を抱えて蹲った。  思い詰めて自傷行為に及ばぬよう武器になるものは全て取り上げられ、セルシオンとも引き離された。  鋭い監視の目が光る自由のない現状に、息が詰まりそうだった。 「………、…食事はちゃんと取りなさい。夕方にまた来る」  涙に暮れる彼女の頭を撫で、それだけ告げたヴォクシスは踵を返した。  出来ることならこの部屋から出してやりたかったが、自身の権限だけではそれは叶わなかった。
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