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それはカルディナが思念の揺籠に入って一時間が経過しようとしていた時だった。
鼓膜を張り裂かんばかりの悲鳴が研究所に轟き、思念の揺籠の内部から激しく戸が叩かれた。
泣き喚く声と同時に小刻みに揺れていた計器の針は大きく振り切り、彼女のバイタルを測っていた医療機関が警告を鳴らした。
直ちに実験を中止しせんと戸を開けた研究員は、そこから突如として溢れ出した大量の水に悲鳴を上げて腰を抜かし、その水に押し流されて床に転がったカルディナはその場でのたうち回った。
そんな彼女に真っ先に駆け寄ったのは他でもない大佐だった。
彼女を押さえ付けるように腕の中に抱き締め、湿りも汚れも厭わず己の外套を剥ぎ取ってその身を包んだ。
「カルディナ!しっかりしろカルディナ!」
腕の中で逃げ惑い、混乱する彼女を正気に戻さんと何度もその名を叫ぶ。
間もなくして、いくらか落ち着いてきた所で、苦しさに喘ぐ両頬を両手で押さえ、視線を強引に自らへと向けさせた。
「カルディナ、私が分かるかっ?」
真っ直ぐな眼差しの問いに、カルディナは酷く震えながらもコクリコクリと頷いて答える。
しかし、震える唇で何とか声を発しようと試みるが、全身が痺れたように感覚が麻痺して上手く喋れない。
次第に目の前が白み、恐怖の中で大佐の胸にしがみついたのを最後にカルディナは意識を失った。
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