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「ヴォクシス・ハインブリッツ、前へ!」
入れ替わるように、今度は大佐が呼び出された。
彼は堂々と国王の前に立つと、先程のカルディナと同じように跪いた。
「ヴォクシス・ハインブリッツ、此度の奪還作戦の功績を讃え、褒賞金を授与する。また、カルディナ・クロスオルベ侯爵の後見人として、貴殿にクロスオルベ侯爵家本邸の所有権及びエルファ島の自治権を譲渡する」
言い渡されたその文言に、カルディナの時とは異なって微かに貴族等からざわめきが起きた。
どうやら対処とはこのことらしい―――。
以前から私欲の為にクロスオルベ家の復権を目論む動きはあったが、大佐個人がカルディナの後見人であることを宣言し、クロスオルベ家が所有していた土地を取り仕切ることで貴族等に牽制を掛ける狙いだ。
また大佐個人が直接的に屋敷や島の所有者となれば、例え軍でも無闇に手出しは出来なくなる。
カルディナ自身に島民の生活も守られて一石二鳥である。
「静粛に!」
キンっと響いたシルビアの声に、再び静寂が戻る。
少しして傍らに戻って来た大佐は、何故かこちらにこっそりとウインクした。
何故だろう―――、その気障な素振りが少々癇に障った。
「ヴェルファイアス侯爵閣下、ご登壇ください」
これで終わりかと思った矢先、王太子に呼ばれてヴェルファイアス侯爵が歩み出た。
侯爵はカルディナと向き合い、その背後に貴族等が並んだ。
「かつて我等がヴェルファイアス侯爵家一門はクロスオルベ家に対し、人道にあらざる行いを致しました。その結果、今日にまでに及ぶ貴殿等エルファ島民への苛烈な迫害に発展したことをここに認め、心よりお詫び申し上げます」
そう告げて間もなく、侯爵等が一斉に頭を下げ、謝罪の言葉を述べた。
その光景に思わず後退りそうになったカルディナだったが、隣の大佐がそっと背に手を宛てがい、彼女を支えた。
彼等の誠意から逃げてはいけない―――。
クロスオルベの名を背負うものとして、その役目を果たせと大佐の眼差しは訴えた。
カルディナは頭を下げたままの彼等の姿に大きく深呼吸した。
「………、皆様、お顔を上げてください」
毅然と言葉を放ち、彼等と向き合った。
拳を握り、自らの思いを言葉にした。
「貴方方の誠意をここに受け止め、場を設けて頂いた事をクロスオルベ家の代表として感謝申し上げます。一先ずではありますが、これを先祖から続いた悲劇の終止符と致します。しかしながら、この場で謝罪を受けたからと言って長年の遺恨が消える訳ではありません。どうか、お忘れなきよう…」
それが今、彼女が口に出来る精一杯だった。
ヴェルファイアス侯爵等は、僅かに顔を強張らせながらも今一度頭を下げ、その旨を肝に銘じると告げた。
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