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変わりゆく日々
クロスオルベ侯爵家再興の知らせは瞬く間に王国中を駆け巡った。
連日、新聞各社はその件を見出しに上げ、クロスオルベ家の実質的な当主となったカルディナは一躍、時の人となった。
また彼女が奪還作戦の英雄でもあったことが更なる話題を呼び、その名は世界でも注目の的となった。
「注目浴び過ぎて、しんどい…」
学校の帰り、羽付き狼に変化したセルシオンを抱き締めつつ、黒塗り公用車に乗り込んだカルディナは溜息混じりに愚痴を零した。
デュアリオンに関する一連の騒動に加えてクロスオルベ家の復権もあり、登下校は護衛官付き軍用車での送迎が絶対となった。
いつ何時、帝国の襲撃を受けても対処出来るようにと武器としてセルシオンの携帯も義務付けられ、学校への持ち込みも許可された―――が、クラスメートから休み時間毎に可愛がられるセルシオンは完全に愛玩犬と化していた。
「やっぱり影響出てる?」
助手席からカルディナに視線を送る大佐は苦笑い。
今日はこれより王城にてデビュタントに向けたドレスの打ち合わせの為、養父として大佐が護衛官を兼任した次第である。
聞くところによれば、この国のデビュタントは親が主体となって行うものらしい―――。
「ええ、がっつりと。友達からのニックネームが既に英雄とか侯爵になってます。挙げ句、謎のラブレターがポストに入るようになりまして…」
そうぼやきつつ、彼女はサッチェルバッグから今朝分の手紙を差し出した。
大佐はそれを受け取り、差出人を確認して思わず笑った。
並ぶ名前はどれも名家の子息ばかりである。
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