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「大人気だね」
「嬉しくないです」
笑い声と共に返された手紙を受け取りつつ、カルディナは素っ気なく呟いた。
「ところで、ダンスの練習は順調?」
「まあ、ぼちぼち…」
間もなく城に着く頃になって、不意に大佐は訊ねたが、カルディナは言葉を濁した。
彼女の通う王立女学園では淑女の嗜みとして週一回、上級生との社交ダンスのレッスンの時間がある。
デビュタントが決まってから本腰を入れてレッスンに臨んではいるのだが―――。
「もしかして、また虐められたり…」
「いえいえ、寧ろリード役に成りたがる上級生が多過ぎてですね…。今回の叙爵で縁起物扱いされていて、有り難い反面リードがあまり上手でない先輩に当たると練習じゃ無くなるというか…」
その返答に大佐のみならず運転手の護衛官も吹き出した。
予想の斜め上であった。
「リードと言えばですが、私のパートナーって決まりました?」
王城の駐車場に車が停まった所で、カルディナは思い出したように訊ねた。
この国では通常、兄弟など男性親族が務めるのだが―――。
「取り敢えず、僕が務める予定」
「そうなりますよね〜」
大佐の返答に、口調は軽くしつつも思わず顔を顰めた。
養父と言えど大佐は上官で王族であるので、断じて恥を掻かせる訳には行かない。
(ダンスの先生に追加レッスン頼まないと…)
トホホと先の予定を嘆きつつ、密かに腹を括った。
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