急転する事態

2/2
前へ
/114ページ
次へ
 安全確保のため一先ずとしてキャスティナを連れて外に飛び出したカルディナ達は、各所から立ち上る黒煙に息を呑んだ。  上空には帝国の戦闘機がこちらを挑発するように旋回しており、それに守られるようにして大型輸送機が虎視眈々と着陸のタイミングを狙っていた。 「敵襲に加えてキャスティナ殿下が狙われるとは…、どっから情報が漏れたかねぇ?」  そんなぼやきを漏らしている場合ではなかったが彼は言わずにいられなかった。  耳に押し込んだインカムからは、皆の混乱が響き渡っていた。 「王城内にスパイがいたとしか考えられません。今は早く状況を確認しないと…!」  焦る気持ちを抑えながらカルディナも緊急時マニュアルに乗っ取り、各所への連絡を急いだ。  国の中枢とも呼ぶべき王城を襲う敵機に、逸早く駆け付けた第一師団迎撃隊は地上より応戦を開始。  その様を横目に、上官からの指示を仰がんと参謀本部へと向かうヴォクシスの背中を、カルディナはキャスティナを担ぐフォルクスと共に追い駆ける。  その刹那、強烈な爆発音を伴い、新たに火の手が上がった。  セリカ皇女を監禁している幽閉塔からだった。 「…皇帝は見限ったか……」  苦り切った表情でヴォクシスは呟き、拳を握る。  その様子にカルディナは言葉を飲んだ。  血縁上だけとは言え、セリカ皇女は彼の母親であり、内心は穏やかでは無いだろう。 「急ごう。陛下やシルビア殿下の安否も確認しなければ…」  冷静に告げて再び走り出した背に、カルディナも続かんとした矢先だった。  ポケットの通信機が鳴り、誰からだと画面を確認した彼女は、示されたその名に度肝を抜かれた。 「大佐!マーチス元帥から連絡が!」  その叫びに、ヴォクシスは耳を疑った。  念の為、元帥にも彼女の番号は教えていたが、連絡が掛かってくることがあるとは驚いた。  全員で物陰に隠れつつ電話に出てみれば、騒々しい雑音に混じり、大声が響いた。 『良かった!無事だな⁉少佐、直ちに第二格納庫へ急行し、機械竜で迎撃と陽動を頼みたい!!陛下や王族が避難経路を奴等に塞がれて王宮から身動きが取れん!敵方を引き付けて退路を確保し、ヴォクシスと共にキャスティナ殿下の護衛も頼みたい!』  端的な指示と情報に呆気に取られながらも、カルディナは了解と応えた。  どうやらこの奇襲で通信局が混乱しており、情報の錯綜を防ぐ目的で直に掛けてきたらしい。  幸い、今いる場所は第二格納庫まで走れば五分以内の場所であった。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加