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序章~Calon Lan~
Nid wy'n gofyn bywyd moethus,
Aur y byd na'i berlau mân:
Gofyn wyf am galon hapus,
Calon onest, calon lân.
贅沢な生活など要らない
黄金も真珠も要らない
求めるのは 穏やかな心
正直な心 清らかな心
Calon lân yn llawn daioni,
Tecach yw na'r lili dlos:
Dim ond calon lân all ganu
Canu'r dydd a chanu'r nos.
清らかな心 善良さに満ちて
ユリの花よりも汚れなく
その歌声は 清らかな心にこそ響く
朝に歌え 夜に歌え
朝のように穏やかな旋律、夜のように厳かな唄は透き通るように響く。
聖なる傲慢を賛美する歌は、呪縛となって”私達”を苛んできた。
しかし”彼女”が歌えば、呪いは翼となって”私”の魂を自由へ解き放ってくれる。
彼女の愛してやまなかったこの歌が、私は嫌いでたまらなかった。
どれほど忌々しくも彼女から瞳を離せなくさせ、耳朶を震わせたこの歌が。
忌々しい皮肉が込められていたこの歌は、まさに”彼女そのもの”だった。
彼女は白百合のように清らかで儚げで、それでいて枯れることを知らない精神の主だった。
穏やかな、正直で、清らかな心は清廉で無欲な彼女にこそ宿る――。
私の穢らわしい魂に響くはずなどないというのに。
それでも彼女は歌った。
Pe dymunwn olud bydol,
Hedyn buan ganddo sydd;
Golud calon lân, rinweddol,
Yn dwyn bythol elw fydd.
もしこの世の富を欲するなら
私はすぐに種をまくだろう
高潔なる富 清らかな心は
永遠に果実を享受することだろう
忌まわしき黄金も宝も”彼女”の手に渡れば、たちまち救済の種となって浄化されていくだろう。
そうして、彼女も彼女の愛する者達も幸福と言う名の果実を賜るだろう。
世界はそうなるべきだ。
繰り返されるカロン・ランの旋律は呪いだ。
Hwyr a bore fy nymuniad
Gwyd i'r nef ar adain cân
Ar i Dduw, er mwyn fy Ngheidwad,
Roddi i mi galon lân.
夜に朝に 私の願いは
歌の翼に乗って天へ向かう
主が 私の救世主が
清らかな心を授けてくれるように
いつか私と彼女の願いが羽ばたいていける日を祈ったこともあった。
しかし、幾度目を経てようやく私は思い知らされた。歌うだけでは、待っているだけでは決して神には届かない。
救いは永遠に訪れない。
Calon lân yn llawn daioni,
Tecach yw na'r lili dlos:
Dim ond calon lân all ganu
Canu'r dydd a chanu'r nos.
清らかな心 善良さに満ちて
ユリの花よりも汚れなく
その歌声は 清らかな心にこそ響く
朝に歌え 夜に歌え
終わりなきカロン・ランは私達の人生を嘲笑うようにループする。
しかし、もう歌う必要も、これ以上繰り返す必要もないのだ。
いつか私は再び帰ってくる――。
あなたの魂を奪うために――。
私が殺してしまったあなたをもう一度――。
※「Calon Lan」ウェールズ賛美歌、作詞:グイロシズ Gwyrosydd
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