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過去の甘い記憶を思い出したことで、胸が締め付けられたかのように痛む。しかし、それを葵は表に出すことなく口を開いた。
「この小説、先生も読んだことありますよ。残念ながら有名な作品ではありますが、私の中では一番の小説です!」
「先生も知ってるんですか?私、最近この本を読み始めたんですけど、この本に手紙が挟まっていたのを見つけたんです」
女子生徒はそう言いながら栞の挟んであるページを開く。そこには、女子生徒の言うようにシンプルな白い封筒が挟まっている。
「封筒が真新しいので、多分最近誰かがここに挟んだのかなと……。それで、この手紙の宛て名なんですけど」
女子生徒は手紙を取り、宛て名が書かれている面を葵に見せる。そこには「葵へ」と書かれていた。その字には見覚えがある。
(もしかして、翔太が出て行った時に置いてあった紙って……)
葵はあの紙に書かれていたことを思い出す。『この中を見て。Fの十番目』と書かれていたはずだ。刹那、葵の目が大きく見開かれる。
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