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「いただきます……」
手を合わせ、最初にサラダを食べようと皿を持ち上げた時だった。サラダの入った皿が置かれていた場所に、何か紙が置かれている。
「何これ?」
折り畳まれた紙を葵は少し期待をしながら広げた。そこには、翔太のとめ・はね・はらいがしっかりとされた字でこう書かれていた。
『この中を見て。Fの十番目』
「は?何これ?」
自分の望む言葉はそこには書いていなかった。途端に葵の眉間に皺が寄る。
「最後に意味わかんないもの、置いて行かないでよね!!」
葵は紙をグシャグシャに丸め、ゴミ箱に叩き付けるように放り込んだ。
葵と翔太の出会いは中学校だった。一年生の時はクラスも部活も何もかも別だったため、お互いに存在すら知らなかった。そんな二人が深く関わるようになったのは、二年生からである。二年生の春、二人はクラスは違ったものの、同じ図書委員になったのだ。
図書委員の仕事は、本の貸し出しや返却を行ったり、本棚の整理をしたりすることである。葵と翔太はよく図書委員の仕事が被る日が多く、自然と話すようになっていった。
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