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「この本はどこの棚だっけ?」
「それは料理本だから、Bの棚だね」
翔太が持ってきた本を葵はBと書かれた紙が貼られた棚へと戻す。二人が通っている中学校の図書室は、棚にアルファベットが書かれた紙が貼られており、アルファベットごとに本のジャンルをまとめている。Bの棚は料理やお菓子のレシピ本が並べられている。
二人で授業のことなど些細なことを話しながら、返却された本を棚に戻していく。葵は手に取ったミステリー小説をFの棚へと持って行く。棚に持っていた小説を戻すと、葵は顔を少し上げてあるミステリー小説の背表紙を見た。今日も借りられることなく、その小説は残されている。
「その本、好きなの?」
葵が背表紙を見ていると、翔太が話しかけてきた。葵は彼の方を振り返り、「うん!」と言いながら大きく頷く。
『桜屋敷で会いましょう』
葵が中学校に入学してこの図書室で初めて借りた本であり、一番好きな本である。しかし、この作者は有名な作家ではなく、この作者の小説はこの一作品しかない。
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