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「有名な作家ではないけど、私はこの人の文章がすごく好きなんだ」
「俺もこの小説、読んでことがあるよ。最初はありふれたミステリー小説かなって思ってたんだけど、最後のどんでん返しが素晴らしかった!」
翔太が興奮したように話す。葵の胸に嬉しさが広がっていった。読書が趣味の友達ですら「知らない。読んだことがない」と言われた本だったからである。そこからは、二人で小説について語り合った。
「探偵の台詞がいいよね〜」
「うん。俺もあの台詞にグッときた!」
その日、二人の距離はグッと縮まり、図書委員が同じというだけの関係から友達になった。
そして二人は同じ高校に進学し、いつしか二人は互いを意識するようになった。高校卒業の日、葵は翔太に告白をし、交際が始まる。大学は別だったものの、二人の交際は順調だった。
大学を卒業してから、葵は教師に、翔太は会社員になり、同棲を始めた。しかし穏やかに続いていた交際は、八年目を迎えた今、壊れかけてしまっている。
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