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(翔太は会社から信頼されているから、海外出張を任されるんだよね……)
寂しくも、そんな彼氏と付き合っていることを葵は誇りに思っていた。しかしある日のこと、仕事から帰ってきた翔太の表情はどこか固く、葵は夕食を準備する手を止め、「どうしたの?」と言いながら彼に駆け寄る。
「実は、シンガポールに転勤してほしいって言われたんだ」
空気がどこか張り詰めていく中、翔太は固く閉ざされていた口を開く。シンガポールの会社と共同で営業を行うことになり、そのプロジェクトメンバーに抜擢されたのだという。短くとも三年はシンガポールで暮らすことになるそうだ。
「えっ!?すごいじゃない!!」
暗い顔をしている翔太とは真逆に、葵は笑顔で彼の肩を叩いた。海外のプロジェクトメンバーに抜擢されるなど、優秀でなければ降ってこない話だ。
(翔太が転勤ということは……)
葵が笑顔を浮かべているのは、将来のことを考えているためである。この転勤をきっかけにもしかしたらプロポーズをされるのでは、そんな思いが彼女にはあった。
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