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2,昔の仮面が、今の私
「……配信機材ってどこに売ってるんだろ」
この国、マギゼシアに入国してから早数日。なんだかんだこの街の慣習にも慣れ始めた頃、私は悩みを抱えていた。
まともに配信機材が売っていない。
前世であれば適当に量販店とか近くのデパートに出向けばある程度集まる者だったが、この世界ではどうもそうはいかないようで。
配信するためのネットワークを発する機材と動画を撮るためのカメラ。
前世と較べればとても商品点数が減ったものだが、商品価値は爆増している。
前に来た商人にその類はいくらで買えるのか、と尋ねた。だが、白金貨数枚だと。
白金貨は金貨10枚分。金貨は銀貨100枚分、銀貨は銅貨100枚分。
つまり、白金貨1枚は銅貨10万枚分に匹敵する。
……ちなみに、この国における年給の平均は銀貨21枚程度だそうだ。
「お金稼ぎ、かぁ……。何が最適なんだろ」
思慮に更ける。
この中世真っ只中のような世界で簡単にお金を稼げて、かつ私の特技もとい強さを生かせるような──
「──あ、あるかも」
ある意味異世界ならではの職業があるではないか。
実際ここにあるのかは甚だ疑問であるが、まぁ探すだけの価値はあるだろう。
そう決めたったら即行動。私は部屋を飛び出した──。
まぁ中世風の異世界なら定番で、ソレはあった。
重厚な扉にぐっと力を加え、ゆっくりと開く。
するとそこは喧噪が渦巻く楽し気な空間が広がっていた。
──私が向かった場所。それはギルドだった。
私には無敵と言っても過言ではない力がある。
字の如く神頼みが幾たびか送る気がしなくもないが、ともかく実力としては十分だろう。
「あえーっと……初めて見る方ですね!冒険者登録ですか?」
「そうですね。あんまり冒険者事情知らないんで、説明を貰えたら嬉しい……ですね」
そこからの幾分は受付嬢からの話を聞いた。
まぁ今まで読んできたものと大差ないから聞く必要性は実質なかった等しいが。
一つ違う点があるとすれば、ギルドのランク制度だろうか。
「ここのギルドはランクが低くてもAランク級の依頼も受けれるようになっています。そのランクの差の分だけ報酬も増加するので、出始めにお金を稼ぎたい方にはおすすめですよ。
──勿論、命の危険が伴いますけれど」
背筋に嫌な寒気が押し寄せる。
直感的に「この人を怒らせてはいけない」と感じた。
冒険者登録をしたのち、Bランクの依頼を即受諾してギルドを出た。
あの人とは仲良くしておいて、逆鱗に触れないよう細心の注意を払っていこう。そう心の中で決意する私だった。
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