Kiwiが教えてくれたコト

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 夜行性動物舎は暗闇の世界だ。レッドライトが薄く灯されているだけで、目を凝らさないと動物を確認することもままならない。  もわっと湿った空気の中を歩く。コウモリのコーナーを横目に前へと進み、夜行性動物舎の最も奥まった場所にたどり着いた。そこがキウイのコーナーだ。  とてもとても暗い空間の中に、その子はいた。ラグビーボールくらいの大きさの、ふさふさとした毛を持つ存在。少し向こうのほうを向いているためか、顔やクチバシは見えない。暗闇の中の、大きなキウイフルーツ。  それは、暗闇の中でただ静かに、生きていた。人間の子供のように明るくはしゃぐ訳でもなく、エサを美味しそうに食べるわけでもなく、暗闇の中でただ、ただ、じっとしていた。  少し、動く。すると、キウイの顔が暗闇の中に薄っすらと浮かび上がる。私はその子と、少しだけ見つめ合った(ような気分になった)。  次の瞬間、腹の底から何か熱い感情がこみ上げてきて、私は嗚咽してしまった。何が起こったのか自分でも分からない。暗闇の夜行性動物舎の中で、私はひとり、泣き続けた。
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