Kiwiが教えてくれたコト

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 その晩、ホテルにチェックインした私は、早めに寝ることとした。川沿いに建つそのホテルはアンティークな調度品が似合うおしゃれな客室を擁しており、ベッドに寝ころぶだけで贅沢な気分を味わえる。  ・・・夢に、キウイが現れた。暗闇の中、キウイがゆっくりと前へと進む。私はその後をゆっくりと追う。  夢の中、ふいに、バタンと扉の閉まる音が聞こえた。幼い私は暗い部屋に閉じ込められて泣いていた。扉の外から懐かしい声が聞こえてくる。 「なんで・・・、なんで、言うことを聞かないのよ!なんで、わたしばっかりこんな仕打ちをうけないといけないのよ!」  お母さんの声だった。悲痛な、叫び声。そして、私の心をえぐるような言葉がそこに続く。 「・・・本当に、あなたなんか生まなけりゃよかった」  数分か、数十分か、幼い私は暗闇の中で泣いていた。その横にキウイが寄り添ってくれていた。  ふいにガチャリと扉が開く。そして、泣きはらした母が私に近づいてきて、ごめんね、ごめんね、ごめんね、と言う。  次の瞬間、その夢のシーンは私の視界から少しずつ遠のいていった。幼い私を抱きしめる、今は亡き母。その像は遠のき、小さくなっていく。・・・私は、自分が夢を見ていたんだと気づいた。  ベッドの上で目を開けて右手を伸ばすと、そこには夕方に天王寺動物園の売店で買ったキウイのぬいぐるみがあった。キウイを胸元に抱き寄せる。 「キウイちゃんのお陰で、自分の心の中の秘密を発見できたのかも。ありがとうね・・・」  そんな感じで安心した私は、深い眠りへと落ちた。
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