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ハッと目を覚ますと、和風の天井が目に飛び込んできた。おでこには、冷やされたタオルが置かれていた。
「……お母さん」
後ろ姿に声をかけると、慌てて駆け寄ってくれた。自分の母親ではない。アイツの母親だ。お母さんは、ホッとした表情を見せた。
「りーちゃん、大雨の中、坂道の途中で倒れていたんやで……」
「……ああ」
「紫乃の、墓参りに行ってたんやね」
「……ああ」
「そうやって紫乃を想ってくれるのは嬉しいけれど、りーちゃんにはりーちゃんの幸せがあるんやから」
オレには、オレの幸せ……そう心で呟きながら、じっと手をみつめた。
「ありがとう。今は、これがオレの幸せやから」
夏の終わり、雨の匂い、掴んだ冷たい手。それが現実じゃなくても、今はそれで幸せを感じることができるから……。
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