時世に帰還

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時世に帰還

 時世管理局に戻ると、平成が慌ただしくフロアを奔走していた。 「令和ちゃん遅い! 遅いって!」 「ごめんなさい! ごめんなさい! あっち行ったりこっち行ったりしてて!」 「君が居ない数十分の間に企業の不祥事案件が浮上して天手古舞だよ!」 「ひょええ~なんでこんな時にぃ~」  令和ちゃんは、平成が取ったメモや保存した情報を確認していく。 「んふふふふ。引き継ぎにはまだまだ掛かりそうね」  明治は鳥瞰するように、大らかに笑う。 「平成さんの遺産が多すぎるせいです!」 「それもそうだが、その子にもだよ」  大正があなたを示してみせた。 「この子に? 私からですか?」  令和ちゃん同様、あなたも頭上に「?」が浮かぶ。 「なーんだ、二人とも知らなかったのか」  PCと向き合っていた昭和が顔を覗かせた。 「え? え? 引継ぎ? どういうことですか? まだ私5年ですよ?」 「その魂だけの状態の子がここに現れたら、既に引継ぎの準備が始まってるってことなんだよ」  平成が資料の頁を捲りながら言う。 「それって、近々天皇様が崩御されるということ? それともまた生前退位?」  令和ちゃんは目を丸くしている。 「近々とは限らない。歴史が進むほど、史蹟は堆く積み重なって覚える事が山積みだ。次の元号になる魂を早めに寄越したんだろう。神様の英断だ」  昭和の言葉に、令和ちゃんとあなたが納得の顔をする。 「明日何が起こるか予想がつかない激動の世の中だ。慎重に行くよ」  平成の言葉に、令和ちゃんの気が引き締まる。 「若い子は大変ね」 「15年でも激動な時代だった」 「明治さん、大正さん、感傷に浸ってないで手伝ってください!」 「あーわしも早くそっち側になりたい」 「昭和さん!」  平成がツッコむ傍で、令和ちゃんが真剣な表情でPCをカタカタしている。それを眺めるあなたの中に、何やら使命感のような情熱が僅かに込み上げてきたのだった。  あなたが時世の管理人になる時代は、刻一刻と近づいている。
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