4人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
そして右手を伸ばし、ちょうど目線あたりの穂高の頭をポンポンと軽く抑えたあと優しく撫でてくれた。
「そろそろ行かないか」
お前の行きたいところ、どこへでも、と囁く彼。
「……行きたいところ」
どこでもって、どこでも? こういった場合、最初ならどれくらいまで許容範囲なのだろう。
いきなり「じゃあホテル行きましょう!」が不味いのはわかる。
──うん、それはない。残念。だったら碇さんの家……、それも意味は同じか。
いやしかし、家に行くだけならおかしくない、のではないか? その結果どうなるかは、また別問題なのだから。
どうしたら引かれずに何とかそちら方面へ持って行けるだろう?
それとも今日のところは大人しくしていた方がいいのだろうか。これからいくらでも機会はあるのだから。
けれど、……ああ、もうどうしたらいい?
舞い上がってあれこれ頭のよくないことを考えている穂高を、その内心など知る由もない千賀志が微笑ましそうに見守っていた。
妄想が現実になる。口に態度に出して構わなくなる。
──これからは妄想じゃなくて、ホントに「えっちしよう!」って言えるんだ! やった、これすごくない?
こちらの『告白』は、いつなら大丈夫なのか。
そっと背に当てられた彼の手の温もりを感じながら、穂高の中はそれだけで占められていた。
~END~
最初のコメントを投稿しよう!