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臭い
これは本当に凄まじかった。
ワキガとか、加齢によるなにかとか、香水つけすぎてさっきまであの人ここにいたよねとか、シャンプー1週間してないとか、そういった生ぬるいものではなかった。
年配の野良仕事帰りのようないでたちのお客様が入店してすぐに強烈な臭いがサロン中に立ち込めた。
カラーの放置中で目を閉じていた別のお客様も思わず眠りから覚めた。
スタッフはお互いの顔を見やった。
その強烈な臭いを例えて言うなら、真夏の収集直前の燃えるゴミがうずたかく積まれている、マンションのゴミステーションの中の臭い。
とにかく鼻が曲がるとはこのことだと思い知らされた。
カラーをご希望だったのでクロス(ケープ)をかけて、文字通り臭いものに蓋をすればなんとかなると思いきや、それすら突き抜けてきた。
シャンプー前にクロスを外すと、体温で熱せられたクロス内の空気がもわんっと広がり、濃縮臭が脳髄を揺さぶり、軽いめまいさえおぼえた。
クロスにも臭いが染み込んでいて、何度洗っても取れず捨てた。
シャンプーをして少しは良くなったかと思いきや、乾かし始めたが最後。サロンの隅から隅までゴミだめの臭いに包まれた。
乾かさなければ帰せない。でもドライヤーを使うと撒き散らしてしまう。
私は、車で窓を全開にして走っていて、突然肥料のすえた臭いが入り込み、とっさに窓を閉めるが時すでに遅し。車の中は肥料の酸っぱい臭いが純満して、換気したいけど新たにまた臭いを取り込んでしまう可能性のあるジレンマ。
あの時と同じ感覚になった。
多分随分と体を洗っていなかったのだろう。我々の感覚では、頭を1週間洗っていないのはさほど汚い部類には入らない。それとは比較にならない位だったわけだから、相当な蓄積がなされていたのだと思う。
実はの人、後日また来店した。
その時も同じ臭いを放っていた。1回目はもしかしたら病気で寝込んでて、今ベッドから起き上がって出てきたばかりかもしれないとか考えてあげた。2度目はさすがにスタッフは腹を立てた。
そのお客様が帰る際
「お客様、大変申し上げづらいのですが、あまり汚れた状態でご来店いただくのは公衆衛生上、他のお客様のご迷惑になります。申し訳ないですが、当店のご利用をお控え願いますか」
もちろん出禁を突きつけた。
頼むから最低限の公衆衛生マナーはお守りいただきたい。
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