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髪をすく
この話を理解して貰うのには凄く時間がかかる。まずは、皆さんが本気で「すく」ということを理解しようと思って貰わないと、絶対に理解することが出来ない。それだけは断言しておく。
この先テンポよく愚痴りたいと思うので、難しくて長くなる話は先にしておこうと思う。
髪が多いからすきたい。軽くしたいからすきたい。
大いに理解ができる。もちろん希望通りやってあげたい。それが美容師である。
ただすくことで、あとから来るリスクを皆さんがどれだけ知っているか、理解しているかが大きな問題点だ。
すきばさみ(専門用語ではセニング)というものはとても便利に作られている。簡単に説明するが、30%のセニングは1回開閉すると30%の髪の毛をすくことができる。逆に言うと、70%の髪の毛が残るというものだ。
じゃあ半分に減らしたければ2回くらいやればいいね!という声が聞こえて来そうだが、ことはそんなに単純な話ではない。
そもそも今日切る前に、今のヘアスタイルで1度もすいたことがない人はかなり少ない。平均して1ヶ月に1cm伸びる。肩くらいのボブスタイルでおおよそ1年半。メンズの耳を出してトップをふわふわさせるようなスタイルで4ヶ月。重めのボブを好む女性ならすかないという選択肢も考えられるが、メンズではまずありえない。
少し話は変わるが、すいたら髪は少なくなるのかという質問に対して、答えはNOだ!
えっ?と思ったあなたは、既にすくことを理解していない。
すいたら髪の毛なくなるし、手触り良くなるから少なくなってんじゃん!と言われると確かにそれは一理ある。
しかしよく考えて欲しい。セニングを入れたところから先が切られてなくなるだけで、根元からセニングまでのところに毛が残る。言い替えると「短い毛を作っている」だけなのだ。
毛の本数を少なくする方法はただひとつ。「毛を抜く」以外にはない。
セニングは決して毛を少なくしているのではなく短い毛を作っている。ということは、すくことに対しての最初の理解ポイントになる。
話を戻そう。
今日のヘアスタイルにおいて、過去にすいたことがある人は、その時に短い毛を作っている。そこのポイントを仮にAとする。ということは、根元からAまでは髪の毛は100%あることになり、Aから先は少し本数がすくなっているはずだ。
※ここではブラッシングやダメージなどで起きる切れ毛はカウントしない。
伸びてきて量が増えたなと感じる時をイメージして欲しい。毛先を触ってそう感じることはないはずだ。必ず根元の方を触った時、あるいはシャンプーでゴシゴシしてる時やドライヤーで乾かす時である。その触って重く感じる部分はほぼ間違いなく根元である。
たまに「1ヶ月前に切って増えた分だけ減らしてくれ」と言われることがあるが、それは意味がわからない。髪の毛が分身して量が増えるのではなく、短くした毛が伸びてきて重さを感じるようになるからだ。なので、そのようにオーダーすることは、すくことを理解していないと言っているようなものだ。
言いたいことはわからないでもないがため息が出る。
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