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ここまで長々とすくことについて話をしてきた。
ここまで読み進んでいただいた方であればある程度理解をしていただけたのだと思う。
すく行為自体が悪いわけじゃない。すき方に問題がある。
バランスよく毛量を調節する場合、最高の調整方法は毛を抜くことになる。もちろんこれは現実的ではない。じゃあ他にはないのか?と質問したくなるはず。
もちろんある。
そもそもここまでバランスが悪くしたことが悪い。常に一定の重さを残しながらすいていかないといつかはしっぺ返しが来る。
抜くことが1番いいと言ったが、毛根には絶対によくない。傷がつき、いずれは生えて来なくなってしまう。そうなると別の問題が生じる。
ならどうするのか?
答えは根元ギリギリからすくことだ。10本中3本を根元からすけば全体の量は70%になる。それだけでだいぶ減ったという実感がでる。さらに毛先辺りを30%のすきばさみでちょこちょこっと切ればもう十分だ。
しかしここで注意しなくてはいけないことがある。それは短くする毛が束にならずに1本1本独立した状態にしなければいけないということだ。理由は簡単。束になってしまうとそこだけ毛が立ってしまう。だから束にならないように独立させなければならない。
そんなの無理だろ!と思われた方もいるかもしれない。時間がかかって日が暮れる!と思われた方ももしかしたらいるだろう。
あとは技術テクニックが必要だ。
30%のセニングを使うのであれば、1cm四方の毛束をつまみ、刃先だけを使うようにして斜めに根元に入れる。数本を挟むイメージだ。そうすることで同じ長さの毛が作られなくなる。
あとはストロークカットやエフェクトカットと言われるような、ドライの髪を持ち上げて落としながら、ランダムにすいていく方法もある。
いずれにせよ、セニングを真横に入れてすいていくよりも手間と時間がかかる。美容師からすると、正直楽をしたくなってしまう部分はある。
そしてもう1点。
現状の髪の状態を判断しなければいけない。ポイントAとポイントBがどこにあるのか。もっと言ってしまえば、ポイントなんて沢山存在している。それをまずは触って判断する。根元にどれだけ残っていて、毛先がどれだけ減らされているのか。最終的にはすいてあるバランスを見極める美容師の手の感覚が必要だ。
指名制の美容室でずっと施術している人ならそんな心配はいらないが、新規や別の美容室でカットしてきた人、そもそも指名制がない美容室だと必ず必要になる。
これを書いていてふと頭によぎったことがある。
腕のいい外科医は切り取る部分が最小限である。ということだ。沢山切り取ればもちろん悪い部分がなくなるわけだが、その後の体への負担は大きい。本当に必要のない悪い部分だけ残さず取れればいい。
美容師も同じ。
本当にいらない髪を選定してすいていく。それが手触りの劣化、艶の減少も防ぎ、長期的に美しさをキープしていける。
いいすき方とは、沢山すいて髪をなくすことではない。どれだけ髪を残して手触りを改善するかである。こんなにたくさんすきました、とすいた量を見せて喜ぶような美容師は注意した方がいいだろう。
お客様はこんな難しい話をしては来ない。だから「すく」という言葉のチョイスになる。他に表現の仕方がないからだ。
美容師もそのことを理解して、ただ闇雲に減らすのではなく、後先しっかり考えてすけるようになって欲しい。
お客様にはすける限界があるということだけは理解していただきたい。そして、すけばすくほどその時はいいが、あとから大変になることも理解しておいて貰うとありがたい。
改めて言うが、決して意地悪とかですかないわけではない。物理的不可能が生じたとき、すけないという判断をしているまでだ。
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