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「まずはあそこに行って確かめよう」
椎名くんはスーパーを指差した。夕方特売と書かれたのぼりが秋風に踊っている。
「夏だったらまだアレが売っているはずだ」
「何? スイカとか?」
「そんなんじゃない。もっとズバッと夏らしいものだ」
夏らしいものってなんだろう。アイスは一年中売ってるしなあ。
なんて思っていたら、椎名くんは店の中じゃなく、外に隣接されていた宝くじ売り場に近づいていった。
「いらっしゃいませ」
「すみません。サマージャンボ宝くじください」
サマージャンボ⁉︎
確かに夏限定だけど。
売り場のおばさんも私と同様びっくりしたように目を開いて、
「あんた何言ってんの? サマージャンボなんて8月4日にもう終了したよ。今はハロウィンジャンボだよ!」
と教えてくれた。
「8月4日⁉︎ 夏終わるの、早くね⁉︎」
「知らないよ! そんなことよりハロウィンジャンボ買ってく⁉︎」
「いや、ハロウィンなんか秋じゃん」
「秋だよ! だから何だよ!」
……うん、確かに。
押しの強い売り場のおばさんの圧倒的な正しさに負けて、私たちは売り場を退散した。
「俺の夢……サマージャンボ1等5億の札束をビルの上からばらまいて踊り狂う地上の人間を高みから見下ろすという夢が……」
椎名くんは悔しそうに拳を固めた。
ヤバい夢持ってたな、椎名くん。
サマージャンボが終わってて良かった。
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