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20体を縫合して、銀色のトレイに並べていく。それを持って青年は暗い廊下の奥に消えた。 戻ってきた青年の手には何もなかった。 「あれ、どうしたの」 「来年放すために冷凍庫に」 「え、死んでたよ」 「うん。死んでたよ」 青年はじっと手のひらを見つめて言った。 「俺の手は、蝉を生き返らせることができる」 順は青年の手をまじまじと見つめる。 どことなく特別な手に見える。 「蝉は、地球温暖化の影響で年々減少している」 床に落ちた蝉の羽を拾い上げながら言った。 「だから、俺は蝉を再生し続けなければならない」 羽は電球の明かりの下できらきらとステンドグラスのように輝く。 釈然としない顔で順が見ていることに気づき、青年はにっこり笑う。 「見たい?」 「え」 「蝉が生き返る瞬間を」 深く頷く順に満足そうに微笑むと椅子に座って同じものを繕い始めた。 青年は繕い終わった蝉を手のひらに載せ、立て付けの悪い窓を片手で押し開けた。 涼しげな風が部屋に入り込んできて、湿った土の匂いが鼻をくすぐった。 青年は蝉を載せた手のひらを窓の外に掲げ、ふっと息を吹きかけた。 すると、蝉の脚がぎこちなく動き始め、羽が震えた。 最後には「ギギッ」という声を残して森の中に飛び立って見えなくなった。 順は瞬きもせずその光景を見つめた。 隣を見ると青年は蝉が消えた森をじっと見つめていた。 ふとその横顔に既視感を覚え、心がざわざわした。 僕は昔からこの青年を知っている気がする。
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