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「美紀、男は河野くん一人じゃないし、──あたしもいるよ」  先程まで過ごしていたカフェに戻ると、新たに買ったドリンクを飲みながら手にしたスマートフォンで時間を潰していたらしい麻里佳が迎えてくれた。  わざわざ「どうだったの?」と確認することもない彼女。美紀の表情で結果は一目瞭然らしい。 「そうだよね。少なくともしばらくは彼氏なんていらないけど、信じられる友達がいればそれでいいわ、もう」  虚勢ではなく、自然と言葉が漏れる。  稜司と付き合ったこと自体は決して悔やんでいない。確かに楽しい時間を過ごせた。大切な恋人だった。  けれど幸せを味わった分、反動が大きいのも間違いはない。 「じゃあ今日はダイエットも栄養バランスも忘れて思いっきり食べようよ! 『乾杯』と行きたいけど、あたしも美紀も酒飲まないからさあ。どこ行こっか。何か食べたいものある?」  親友の内心などお見通しだろう麻里佳が明るく誘うのに、どうにか気分を上げて答える。 「外で食事はちょっといろいろ持たないと思うから、悪いけど麻里佳の部屋行っていい? デパ地下寄って帰ろうよ。美味しそうなのいっぱい買って豪遊しよう。私の奢りで!」 「えー、ラッキー! 場所提供するだけで御馳走になれんの!? じゃあ飲み物とかデザートはあたしが買うよ」  大仰に喜んで見せる麻里佳に心の中で手を合わせて感謝した。  美紀は実家暮らしのため、こういうときに助けてくれる友人の存在がありがたい。 「うん。私ね、最後に稜司のこと考えて終わりにしたいの。──たぶん泣いちゃうから、その迷惑料コミだと思って」  初めての恋人との別れ。  いつまでも引き摺りたくはないものの、瞬時に切り替えるのは難しかった。だから「今日だけ、あと一回だけ」と決めて、すべてを吐き出してしまいたい。  黙って頷いてくれる親友に、「じゃあ行こうか」と声を掛けて席を立った。  ──これでよかったのか、今はまだわかんない。でも「これでよかった」って思えるようにするのが大事なのかな。麻里佳に付き合ってもらって、そのための「区切り」にするわ。                               ~END~
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