4人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
【1】
「ちょっと蓮。何よこれ!」
「え? あ、あーっと。ごめん、妹の忘れものだ」
クリアブルーのハート型ピアスを突き付けながらの静加の咎めるような声に、俺は咄嗟に用意していた弁解を口にする。
用意周到に考えてはいたものの、これまでの数年間使う機会は一度もなかった。まあ、一応隠してはいたからな。
「……へぇ。蓮の妹さんてまだ高校生じゃなかった? 十歳近く違うって言ってたよね? それでピアスなんてするんだ。そもそもいつ来たのよ。というか、妹さんがこの部屋に来ることなんてあるの?」
軽く首を反らして矢継ぎ早に問い掛けて来る彼女。
「き、去年の夏。ライブ行くのに俺の部屋ホテル代わりにしてさぁ。それが親の条件だったんだよ。今どきの女子高生なんて、学校の外じゃピアスも化粧も平気でしてるって!」
疑っていることを隠しもしない静加に、俺は薄っぺらい『設定』を並べた。
「ふーん、そうなんだ。あたしの高校はピアスなんてとんでもなかったわ」
しどろもどろで我ながら怪しさしかない俺に、静加は冷たい一瞥をくれる。だからって事実を打ち明けるわけにはいかなかった。
いったん始めたからには、せめて最後まで貫き通すのが誠意だろ?
最初のコメントを投稿しよう!