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 一対一で出掛けたりですらない、男女それぞれ複数人で学食で食事したとかカラオケに行ったとかその程度。  本当に普通の友達関係に過ぎなかったのに。  逆の立場でそこまで干渉されたら、俺だって窮屈だし気分が悪い。  そんなことさえ考えられなかった。若さがそのままバカさだった。  束縛に疲れ果てたらしい真亜沙が、別れ話を切り出したのは卒業の半年ほど前。  翻意の余地もない通告だった。  向こうの部屋まで押し掛けてすがりついた俺を、彼女は心底不快そうに拒絶した。嫌悪に歪む真亜沙の表情が、今も記憶に刻まれてる。  ああ、もうどうしたって無理なんだ。  悟った俺は、部屋を去る際に彼女が顔を背けた隙を見てローテーブルの上のピルケースをポケットに入れていた。  それきり俺たちの関係は、単なる大学のクラスメイトに戻ったことになる。  だけど結局、少なくとも俺の方は真亜沙を『友達』だなんて思えないまま卒業したんだ。
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