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◇ ◇ ◇
待ち合わせたチェーンのカフェ。
俺たち二人は、互いに大学入学で地方から上京して来てる。
真亜沙も俺と同様に、そのまま東京で就職したのだけは知っていた。
「真亜沙、これ」
俺が掌に載せておずおずと差し出したブルーのピアスに、彼女は眉を寄せ首を傾げている。
「……なんなの?」
不審げな声。何、って。──真亜沙、いったい何を言っているんだ?
「あ、その別れるときにお前の部屋から、悪か──」
「あー! あんたが買ってくれたやつ? いらないよ、そんなの」
ようやく思い出した、といった調子で、真亜沙が気怠そうに言い放つ。
「い、らない?」
目の前の女の言葉が一瞬理解できなかった。どうしたんだ? 真亜沙。
お前が宝物だって大事にしていたあのピアスだよ?
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