【3】

2/3

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
    ◇  ◇  ◇  待ち合わせたチェーンのカフェ。  俺たち二人は、互いに大学入学で地方から上京して来てる。  真亜沙も俺と同様に、そのまま東京で就職したのだけは知っていた。 「真亜沙、これ」  俺が掌に載せておずおずと差し出したブルーのピアスに、彼女は眉を寄せ首を傾げている。 「……なんなの?」  不審げな声。何、って。──真亜沙、いったい何を言っているんだ? 「あ、その別れるときにお前の部屋から、悪か──」 「あー! あんたが買ってくれたやつ? いらないよ、そんなの」  ようやく思い出した、といった調子で、真亜沙が気怠そうに言い放つ。 「い、らない?」  目の前の女の言葉が一瞬理解できなかった。どうしたんだ? 真亜沙。  お前が宝物だって大事にしていたあのピアスだよ?
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加